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画像で分からず見逃されやすい腰痛

仙腸関節障害

井須豊彦、金景成監修『完全図解坐骨神経痛』(エクスナレッジ)より引用
イラスト/ガリマツ

 仙腸関節は骨盤の骨である仙骨と腸骨の間にある関節で、体の動きに伴ってわずかに動いています。体にかかる衝撃に合わせてこの関節面がわずかにスライドすることで負荷を吸収しており、二足歩行には欠かせない機能を有していると考えられています。不用意な動作あるいは繰り返しの負荷で関節に微小な不適合が生じた状態が仙腸関節障害であり、腰痛・臀部痛や下肢痛、しびれの原因となります。老若男女問わず発生する非常にありふれた病態です。

症状

 仙腸関節部を中心とした腰痛・臀部痛が一般的です。鼠径部(そけいぶ・足の付け根)や坐骨部の痛みも伴うことがあります。椅子に座るのがつらい、仰向けに寝れないなどの症状が特徴的です。腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアと症状が似ているので、注意が必要です。

診断

 画像のみでの診断は困難です。患者さんの痛みの部位の確認と痛みを誘発するテストを行い、仙腸関節ブロックにより疼痛が改善することにより診断がなされます。

治療

 疼痛を誘発するような動作を控え安静にします。疼痛に対しては各種の鎮痛剤、骨盤ベルトによる外固定、仙腸関節ブロック、リハビリテーションなどの保存的治療を行います。

保存的治療により改善が得られずに日常生活に支障をきたしているようであれば、手術(仙腸関節固定術)を考慮します。

日本仙腸関節研究会

 仙腸関節障害の診断と治療の知識、技術の普及ならびに学術振興に寄与し、仙腸関節診療の進歩と向上を図ることを目的とし発足されました。当院では積極的に仙腸関節障害の診療を行っています。

日本仙腸関節研究会について

上殿皮神経障害・中殿皮神経障害

井須豊彦、金景成監修『完全図解坐骨神経痛』(エクスナレッジ)より引用
イラスト/ガリマツ

 上殿皮神経は腰骨の神経に由来し、殿部頭側の感覚を支配します。上殿皮神経が、ズボンのベルト付近で腸骨を乗り越えるあたりで、筋膜や腸骨により圧迫されると疼痛(腰痛)が引き起こされます。一方、中殿神経は仙骨の神経に由来し、上殿皮神経と同様に殿部の感覚を支配します。中殿皮神経は、仙骨の背面からでて、仙腸関節の背側の靭帯(後仙腸靭帯)と大殿筋の中を走行するところで圧迫されると殿部の下の方の痛みが出現します。

症状

 殿部痛(おしりの痛み)は、座位、立位、歩行で出現し、悪化する傾向があります。疼痛が殿部に留まらずに大腿部(もも)後面に広がる場合があります。歩行で悪化する場合があり、腰部脊柱管狭窄症の間歇性跛行と症状が似ているので注意が必要です。

診断

 上殿皮神経と中殿部神経の絞扼部位を指で圧迫すると痛みが誘発されるチネル様徴候、上殿皮神経ブロックによる鎮痛効果により診断がなされます。MRIなどの画像検査による診断は困難です。

治療

 痛みが起こる姿勢を避け、痛みが強い場合には安静にします。病態から各種の投薬(鎮痛剤など)を使用します。症状が強い場合には、上殿神経や中殿神経にブロックを行います。これらの保存的治療にて改善が得られない場合には、外科的治療(殿皮神経の神経剥離術)を行います。

梨状筋症候群

井須豊彦、金景成監修『完全図解坐骨神経痛』(エクスナレッジ)より引用
イラスト/ガリマツ

 坐骨神経は、骨盤から出るところで梨状筋という筋肉の下を通ります。この梨状筋は通常は柔らかいのですが、負担がかかるなどが原因となり梨状筋が硬くなると、殿部に痛みを起こしたり、坐骨神経を圧迫して下肢のしびれを起こしたりします。このような病気を梨状筋症候群といいます。

症状

 殿部の外側あたりの痛みが主体ですが、坐骨神経の圧迫による坐骨神経痛により下肢後面にかけてしびれや痛み(坐骨神経痛)が出ることもあります。長く座っていると症状が強くなり、梨状筋と骨盤の間を走行する坐骨神経が圧迫されることによります。また、歩くと楽になる傾向があります。

診断

 梨状筋に一致する部位を圧迫すると圧痛があり、また下肢後面に痺れや痛みが誘発されるチネル徴候が確認できるときがあります。MRIでは梨状筋が肥大している所見が確認できる場合がありますが、多くの場合は異常を認めることは困難です。梨状筋に局所麻酔薬を注入する梨状筋ブロックによって症状が軽くなることが、診断の大きな手掛かりになります。

治療

 座位の際に殿部を圧迫しないように心がけるなど、症状が誘発されるような日常動作を避けるようにします。筋緊張緩和剤などの薬物療法や、リハビリテーションにより梨状筋ストレッチを行います。症状が強い場合には、梨状筋ブロックを行います。これらの治療で効果が乏しい場合には、手術を行うこともありますが、手術が必要となることは多くはありません。

中殿筋障害

「井須豊彦、金景成監修『完全図解 坐骨神経痛』(エクスナレッジ)より引用」
イラスト/ガリマツ

 中殿筋は腸骨と大腿骨頭をつなぐ筋肉で、片足立ちや足を横に挙げるときに骨盤を安定させる筋肉です。中殿筋に負担がかかり緊張し固くなることで痛みが出現します。

 痛みの原因となっている中殿筋の痛み(殿部痛)が出現し、片足立ちがしにくくなります。時に大腿外側や後面に痛みを伴うことがあります。座位、中腰姿勢で増強する傾向があります。また、歩行でも症状が増強する場合もあり、腰骨の病気である腰部脊柱管狭窄症の症状である間欠性跛行と似ているので注意が必要です。

検査

 中殿筋部を圧迫することで、殿部の痛みが誘発されたり増強します。中殿筋へのブロック注射による鎮痛効果により診断されます。画像での診断はできません。

治療

 安静、殿筋ストレッチ、投薬、中殿筋ブロックを行い、改善しないようであれば手術(中殿筋筋膜切開術)を考慮します。

当院の特徴

  • 腰痛・殿部痛の診療経験が豊富な脊椎脊髄外科専門医が診療を行っています。
  • 診断に必要なMRIを備えています。
  • 投薬、ブロック注射、装具療法、リハビリテーションなど幅広い治療が可能です。
  • 手術治療を要する場合には、連携医療機関へご紹介します。

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